聞き手:上野敏寛
龍谷大学地域協働総合センターRA
今回は、ふくちやまCAP代表の足立淳子さんに、これまでのご経験や地域活動への想い、地域と大学の関わりなどについてお伺いしました。龍谷大学政策学部では、市民の意見を政策に反映させる仕組みとして政策マーケティングの手法を開発しています(第3回コラム参照)。一方、今回のインタビューでは、100人ミーティングが市民(参加者や市民ファシリテーター)や学生(龍谷大学、成美大学、滋賀大学)にとって相互に学び合う共通の場となっていることが分かりました。
「未来を描く!福知山100人ミーティング」では市民ファシリテーターとして話し合いを推進した(8月21日、福知山市(上野敏寛撮影))
私は京都府福知山市に生まれ、大学時代から社会人にかけて福知山の外にいましたが、結婚を機に戻ってきました。子どもが生まれ、子どもだけでなく親も育てる環境づくりに関心を持ち、96年に福知山で子育て支援グループを始めました。子どもは自然の中でのびのび遊び、親は子育てについての悩みを話す場を作りました。この活動の考え方のもとになったのが、CAP(Child Assault Prevention)です。CAP(キャップ)は、子どもの人権をわかりやすく伝えているプログラムです。このプログラムをもとに「子どもが安心して暮らせる社会」とつくろうと、子育てに関する様々な活動をしてきました。
同じ時期に、福知山市の人権ファシリテーター養成講座を修了し、「市民サークルWITH YOU」でも活動していました。その頃、福知山市では「市民協働」や「未来を描く!福知山100人ミーティング」、「福知山未来創造プラン」策定等と市民の声を聴く場を多く設けられ、市民ファシリテーターとして参加する機会が増えました。
地域と関わる前は、投票率の低さなどから、「まちづくりに興味がない人が多いのだろうなぁ」と思っていましたが、ファシリテーションをしてみると、まちづくりについて考えている人の多さに気づきました。ファシリテーターとしての役割は、参加者から意見やアイディアを引き出し、つなぐことです。以前、ファシリテーションをしていた時、参加者からまちづくりの原動力となるものの表現として「まち力」という言葉が出ました。素朴だけど、手アカがついていない新しい言葉です。この言葉を起点として参加者のアイディアが次々と出せたことは大きな成果でした。そして、参加者とともに成長しているんだと感じた瞬間でもありました。
毎回、市民の方々の意見やアイディアに驚かされてばかりです。今年は、龍谷大学、成美大学のほか、滋賀大学や立命館大学の学生さんも参加し、若い顔ぶれが増えました。若い人たちの福知山を大事にする想いが伝わってきて、嬉しい気持ちです。
ファシリテーションでは、人を尊重する気持ちが大事になります。意見やアイディアをファシリテーターの言葉がけによって引き出すことが大切だと思っています。意見を出す中で、「女性だから優しくなければならない、男性だから力強くなければならない」といった男女観の固定観念や偏見、弱者を疎かにする言葉などが参加者から出てくることがありますが、ファシリテーターは、「誰もが安心して暮らせるまちづくり」「一人ひとりが尊重されるまちづくり」を常に念頭に置き、人権を大切にしてもらえるファシリテーションをしなければなりません。
ともあれ、ファシリテーターは場数が重要なので、学生さんにとって良い機会だと思っています。
まず、人権について深く学ぶことがとても重要です。例えば、人権については、私がやっているCAPが分かりやすいと思います。他にも、私は、龍谷大学をはじめ、大学や中学・高校で「デートDV防止」の講義を行っています。これまでに、学生さんも人権について学ぶ機会があったかと思いますが、この「デートDV防止授業」は、男女の権利についての学びになり、身近なこととして考えやすく、とてもわかりやすいものです。ぜひ、若い間にこれらのプログラムで学び、深めていただければと思います。
プログラムには、ぜひ女性の学生さんも参加してほしいと思います。話し合いの場では、多様性が大切です。男性ファシリテーターだけでなく、女性ファシリテーターが入ることで、今までと違った視点で新しいアイディアが生み出されると思います。
印象的だったことは、福知山市に引っ越して4年になる方が「100人ミーティングに参加したことでやっと福知山市民になれた」という話を聞いたことです。話す場を設ければ、人は集まりまちづくりについて話されます。市内には、子育てで困っていたり、親の介護で悩んでいたりするのに、気軽に話す場やコミュニティをもっていない方が多いです。今後も話し合いができる場が必要だと思います。話し合いの場を通じて、自分は何ができるのか考えることが力につながり、それが束となって地域の力となると思います。今後も、ファシリテーションを通じて、地域と関わっていきたいと思います。
以 上