2016年10月12日
第11回:自分が成長できるチャレンジを続ける(倉寿和氏、初級地域公共政策士)

地域公共政策士資格制度は、2009年度より京都府内の9大学、行政、経済団体、NPO等と協働しながら、設計・開発・運用を行ってまいりました。2011年度からは地域公共政策士の本格運用を開始し、2015年度からは学部資格への拡充の要望を受け、初級地域公共政策士もスタートしています。2016年現在、50名以上の資格取得者が誕生しています。そこで、本コラムは、資格取得者の声を特集連載し、資格取得の動機や学びのプロセスにおける気づきを取り上げます。

P1060871.JPG倉 寿和氏(写真右)
(初級地域公共政策士/龍谷大学政策学部4年生/2017年4月より福知山市役所勤務予定)

なぜ政策学部で学ぼうと思われたのですか。

兄が龍谷大学の卒業生であり、龍谷大学には興味がありました。また、進路を考える中で「人の役に立つような仕事がしたい」と考えていました。そんな時にオープンキャンパスで政策学部深尾昌峰先生の「政策学部で人の役に立てることを学びましょう」というお話を聞いて「ここだ!」と直感しました。

実際に政策学部に入ってみてどうでしたか。

 いい意味で裏切られたな、と思います。授業の中では、先生の話を聞くだけでなく、コミュニケーションをとる時間が多いですね。学生による課外活動もたくさん行われています。正直、こんなに実践的な活動ができると思わなかったので、魅力的でした。僕もいろいろな実践活動をしてきました。
オープンキャンパスや講演会で政策学部のPRを行うイベントスタッフやRyu-SEI GAP(学生が主体となって、教職員と一緒に地域課題の解決に取り組む実践型プログラム)、クラスサポーター、龍谷大学内にあるカフェ樹林でのチームノーマライゼーション(龍谷大学生と障害者が共に学び、未来を創る活動)等......。正課としては商店街や地域活性化に取り組むゼミのゼミ長やPBL科目に取り組んできました。
 3年生までは、まだまだコミュニケーション能力がないなと思っていたんです。意見に反論とかもできなかったですし......。ただ、就職活動が始まって、模擬面接等をする中で、質問に詰まることなく答えられ、先生からも「コミュニケーションに問題はないね」と言われて、はじめてコミュニケーション能力がついてきたんだ、と実感しました。

なぜ初級地域公共政策士を取ろうと思ったのですか。

 政策学部で学んだことを証明できる資格という説明を聞いていたので取ろうと思いました。初級地域公共政策士のプログラムの中には、財政学の授業もありました。数字が苦手でそれほど興味はなかったのですが、資格プログラムの一つだし、あえて自分を追い込む意味でもその授業を取りました。実際に授業を受けてみると、面白かったんです。日本の財政状況がわかるし、財政は政策立案においてとても重要なポイント。いくらいいこといっても、お金がないとやっていけません。政府がなぜ公共サービスを提供するのかも分かったのでよかったです。しかし、今でも経済や財政は苦手なので、これからも学んでいきたいと思います

他には地域公共政策士のプログラムの中でどのような授業を受けていたのですか。

 PBL科目である政策実践・探究演習を2、3年生のときに受講していました。授業では、いくつかの地域連携プロジェクトがあるのですが、僕は「市民との話し合い」がテーマである福知山・守山プロジェクトに参加しました。なぜなら、やっぱり自分のコミュニケーション能力に自信がなかったから。
1年目は自分自身あまり積極的に活動することができませんでした。2年目はその反省を踏まえて、市役所の方とのやり取り等積極的に取り組むようにしました。本もたくさん読むようになりましたね。「話し合いをなぜやるのか」と考えたとき、その理由をしっかり説明できるようになりたいな、と思って。卒論も市民対話・熟議をテーマにしています。

その授業がきっかけとなった来春から福知山市で公務員として就職されるんですよね。

 地元で就職するか福知山に就職するかで悩みました。「自分が一番成長できるのはどこか」と考えたとき、地元だったら親に甘えてしまうかもしれない。それだったら1人暮らしができる福知山市で働くのがいいのでは、という考えに至りました。
それに、福知山市はいろいろな可能性があると思うのです。福知山駅周辺部では都市部の生活ができる。一方、同じ福知山市内でも大江町、三和町等は田舎的な生活ができて、バランスがいい。観光のポテンシャルもあると思うんです。毛原の棚田や夜久野の漆、福知山城......。そういった地域資源が外部の目によって新たな発見につながることもあると思うんです。Iターン者として観光を盛り上げる一つのきっかけづくりができれば、と考えています。

地域にかける本気さが伝わってきますね。その本気さはどこから来ているのですか。

まわりの影響が大きいと思います。僕の周りには、社会を本気で変えたいと考えているメンバーがたくさんいます。チームノーマライゼーションのメンバーだったら、障害者の就労支援や若者が主体的にアクションを起こすためにはどうしたらいいのかを真剣に考えている。そういうメンバーと活動すると「自分も挑戦していかなきゃ」って思います。

地域公共政策士は、今後どのような資格になっていったらと思いますか。

今後、資格取得者から多様な人材が生まれてくると思います。そういった人たちとつながる機会が増えていったらいいなと思います。「制度を作った、資格を取得したら終わり」ではなく資格取得者同士が交流できるようになると、多様な働き方や多様な視点も生まれてくるのではないかと考えています。

聞き手:地域協働総合センター 博士研究員 久保友美

大学と地域(コラム)