地域公共政策士資格制度は、2009年度より京都府内の9大学、行政、経済団体、NPO等と協働しながら、設計・開発・運用を行ってまいりました。2011年度からは地域公共政策士の本格運用を開始し、2015年度からは学部資格への拡充の要望を受け、初級地域公共政策士もスタートしています。2016年現在、50名以上の資格取得者が誕生しています。そこで、本コラムは、資格取得者の声を特集連載し、資格取得の動機や学びのプロセスにおける気づきを取り上げます。
深尾拓史氏
(初級地域公共政策士/龍谷大学政策学部4年生/2017年4月より民間企業に就職)
私の地元は高齢者が多く、お買い物に不自由なお年寄りの方がいらっしゃいました。観光客が多い地域でもあったので、渋滞問題もありました。そんなことから都市計画に興味を持っていて、大学で学びたいと思ったときに龍谷大学政策学部のことを知りました。
地域に入って活動する機会がたくさんあって、実際に地域がどのような課題を持っているのか知ることができました。自分の地元だったら、その課題をどのように生かすことができるのか考えるのは面白かったです。
1年生の演習の授業でした。先生が「政策学部だと「地域公共政策士」という資格が取れるので取ってみたら」と勧められたのがきっかけです。せっかく政策学部に入学したのだし、資格教育プログラムの科目を見るともうちょっと頑張ったら取れそうだなと思ったので取ることにしました。就職活動のときに、「初級地域公共政策士」のことを履歴書に書いたところ「どんな資格なの?」と質問されました。「地域の課題や魅力を見つけ、課題解決や地域活性化につなげていく際に必要な基礎的知識を持っていることの証明です」と説明していました。
2年生、3年生のときにPBL科目である「政策実践・探究演習」の伏見区投票率向上プロジェクトに関わっていました。まず、1年生のときにプロジェクトの前身となる活動に参加をしていました。その活動とは、2014年4月にあった京都府知事選を伏見区と学生が一緒になって盛り上げるというものです。「選挙についてあなたが考えること」をテーマにスケッチブックにキーワードを書いてもらい、写真に撮ってフェイスブックにアップしていました。
私の地元では選挙で選ばれる議員が、長年にわたってある程度決まっていたんですよね。一方、ニュースなどで政党の方針と違う行動をとった人が追い出されているのを見て、選挙の際には「政党」を見たらいいいのか「個人」を見たらいいのか分からなくなってきました。この活動を通して、選挙に対して自分の考えをまとめることができるのではないかと思い、参加をしました。
そこで若い人の投票率を上げるのはなかなか難しい現状が見えてきたんです。同じ世代の人々が集う大学だったら選挙の意義を伝えられるのではないかと思い、2年生以降も活動を続けました。政治の身近さを体験してもらうような特別講義や学生同士によるワークショップも行いました。一人ひとり政治に対していろいろな考えを持っていることが分かったので、「もっと話し合う機会があれば投票率向上にもつながるのではないか」と思い、その後も講義やワークショップ、京都市会との意見交換を行いました。機会を増やすことは当然大事ですが、同世代の人たちはどの程度政治について知識をもっているのか分からない。その問題をどうやって改善していけばいいのだろう、と考えるようになりました。
2016年の参議院選挙では、龍谷大学に投票所を設置し、私も運営に携わりました。2日間で学生もたくさん来てくれました。「投票しよう」という意欲を駆り立てたのは、大学に実際投票所を置いたことによる成果だと思います。
資格教育プログラムの中で自分の興味関心とは異なる科目を学んだとしても、実際に現場に出て活動をしていると、「あの科目で学んでいたことはこの活動につながるんじゃないか」と気づくことがあります。
私の場合はもともと交通に興味を持っていましたが、交通問題を考えるときに都市計画の視点だけでは不十分だと思うんです。ある乗り物の環境に与える影響を考えるのであれば環境学の視点が必要ですし、公共交通機関がもたらす経済効果を考えるのであれば経済学の視点が必要です。さまざまな視点から物事を総合的にみる力がついたように思います。
聞き手:地域協働総合センター 博士研究員 久保友美