2016年10月19日
第12回:「自分で考えてみる」ことが大切(中村拓弥氏、初級地域公共政策士)

地域公共政策士資格制度は、2009年度より京都府内の9大学、行政、経済団体、NPO等と協働しながら、設計・開発・運用を行ってまいりました。2011年度からは地域公共政策士の本格運用を開始し、2015年度からは学部資格への拡充の要望を受け、初級地域公共政策士もスタートしています。2016年現在、50名以上の資格取得者が誕生しています。そこで、本コラムは、資格取得者の声を特集連載し、資格取得の動機や学びのプロセスにおける気づきを取り上げます。

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中村 拓弥氏
(初級地域公共政策士/龍谷大学政策学部4年生/2017年4月より実家のお寺をつぐため2年間修行予定)

なぜ政策学部で学ぼうと思ったのですか。

家の周りが自然豊かで、近くに鹿が現れたりするような環境でした。大学では環境学や動物生態学を学びたいと思って学部を探していたんですが、理系ばかり。僕は文系だったので、どうしようかなと思っていたときに、高校の担任から「文系のアプローチからも勉強できる学部があるよ」ということで教えてもらったのが政策学部でした。
政策学部ではたくさんの授業を受けて、興味の範囲も広がっていきました。環境学から始まって、憲法、経営学、経済学......。政策学部は色々な先生の影響を受けることができるいい学部だな、と思いました。2年生後期にゼミを決める際に、阿部大輔先生が「実践も大事だけれど、本読んだりすることも大事」とおっしゃられたことに共感をして、阿部先生のゼミに入りました。

周りの仲間や先輩、後輩にはどんな方がいましたか。

大学では人の運に恵まれているな、と思います。僕たちは、龍谷大学政策学部3期生。1期生の先輩は0から1を創っていったパワーがすごいな、と思います。就職も「会社に勤める」という枠にとらわれず、自分のやりたいことをやったり、そのやりたいことが会社に評価されて、自分の満足いく就職先を決めたり。同期も先輩、後輩も互いに刺激しあえる仲間に巡り合うことができました。

初級地域公共政策士をなぜ取ろうと思ったのですか。

 これまで資格というと「試験に合格してとれるもの」というイメージでした。初級地域公共政策士は授業をとって、成績を収めたら取得できる資格ということで資格へのイメージが変わったように思います。自分が履修をした科目と初級地域公共政策士のプログラムを照らし合わせてみると、あと数教科とったら資格が取れるということで、頑張って取ることにしました。

その数教科の中にPBL科目である「政策実践・探究演習」があったんですよね。

 1、2年生のときは、興味をもった授業の本を読むことが多くて地域に出ることはあまりありませんでした。3年生からは地域で活動をしてみようということで、PBL科目を受講しました。複数ある地域連携プロジェクトの中から京丹後プロジェクトに参加をしました。政策学部の深尾昌峰先生が「地域活動は「楽しいフィールドワーク」ではありません。地域課題のすべてを学生が鮮やかに解決するのは夢物語です。地域活動を通して学生たちは課題を知り、自分の足りなさを知り、ジレンマを感じるのです」とお話をされていました。実際に京丹後に入ってみると、そうなのかもしれないと実感しました。地域に出て色々とアクションを起こしても、地域が変化するのはなかなか難しい。京丹後市役所の方が「過疎高齢化集落である農山村地域の抱える問題は近年何も変わっておらず、学生が地域に入ることによってその問題に大きな変化がみられることは、それほどないのでは」とおっしゃっていましたが、その通りだな、と。活動をやっている最中は活動そのものに熱中して、地域の様子まで気が回らなかったけれど、1年間やってみてふりかえると地域はあまり変わっていなかったのかな、微力だな、と思いました。それも一つの経験と思っていたところ、自分たちがやったイベントを地域の方々がその後も続けてくださっていることを聞きました。そのときは嬉しかったです。「成果が何だったのか」とすぐに考えるのではなく、長いスパンで見ることが大切だと思いました。

政策学部や地域公共政策士での学びにキーワードをつけるとしたら何ですか。

 「つながり」。人との触れ合い方が、高校のときとは変わったと思います。日常生活の中でも目があったら、軽く会釈をするとか。同期が地域のおばちゃんたちと積極的に話している姿を見て「すごい」と思っていたけれど、ちょっと頑張ってみれば自分にもできるなと思いました。意外と簡単なことができていなかった。そういうことができていない世の中がもったいないと思いました。

実家のお寺をつぐために、来春から修行が始まるんですよね。

 PBLで京丹後に行って、過疎地の問題を実感しました。ただ、過疎地だけでなく、都市部にも問題がある。僕は京丹後に行って、都市部の問題についてより考えさせられました。過疎地にも都市部にもお寺はあるけれど、どちらも問題を抱えていて大変。お寺から社会課題を変えられるような試みができればいいなと考えています。
また、今ある社会課題の大半は、経済的格差から生まれてきているように思います。お金を払ってサービスを受けるという経済概念を取っ払ったら、社会課題は解決できるのでは。それがお寺だったらやれる可能性があると思ってお寺をつぐことにしました。

地域公共政策士は今後どうなっていったらいいと思いますか。

 地域公共政策士は取るまでの過程が大事と思います。単位が取れたらOKではなく、授業を受けることで「どのような学びがあったのか、」「どのような視点を持てたのか」を自分なりに考えることが重要。授業での話を、実際の地域に応用したらどうなるのか踏み込んだ視点があれば、授業での学びが自分の中でもっと貴重なものになると思います。先生が教えてくださったことをやってみることももちろん大切ですが、自分の中でふりかえることも大切だと考えています。
 この資格が、地域課題に取り組むきっかけになったらいいなと思っています。例えば、就職先を選ぶときにお給料がいいところより社会に貢献をしているところを選ぼう、みたいな。ものごとへの視点が変わっていくといいなと思います。


聞き手:地域協働総合センター 博士研究員 久保友美

大学と地域(コラム)