地域公共政策士資格制度は、2009年度より京都府内の9大学、行政、経済団体、NPO等と協働しながら、設計・開発・運用を行ってまいりました。2011年度からは地域公共政策士の本格運用を開始し、2015年度からは学部資格への拡充の要望を受け、初級地域公共政策士もスタートしています。2016年現在、50名以上の資格取得者が誕生しています。そこで、本コラムは、資格取得者の声を特集連載し、資格取得の動機や学びのプロセスにおける気づきを取り上げます。
石田浩基氏(地域公共政策士/一般社団法人京都府北部地域・大学連携機構勤務)
大学卒業後、民間企業に勤めていましたが、辞めて2011年に龍谷大学大学院政策学研究科に入学しました。学部時代の同級生が社会人として働く中、改めて学びの道を選び「どうやって生きていこうか」と考えた時期もありました。大学院では学部進学の院生、社会人院生ともに多様な方々が集まってきていました。行政職員、NPOスタッフ、長期海外留学経験者、企業の人事コンサルタント......。それまでは考えてもいなかった多様な生き方を知る機会となりました。授業でも先生方が「様々なセクターが集まって社会を動かしていくのだ」とよくお話されていました。僕の中で「多様性」というのが一つのキーワードとなっていったように思います。
地域公共政策士が社会的パスポートの役割を果たすことに魅力を感じました。社会的パスポートの意味は、「自分がどのような学習をしてきたのか」「どのような能力が身についたのか」を地域公共政策士という資格で証明し、その証明がパスポートのように、仕事をする際に社会の各セクターを自由に行き来できる機能を発揮するということです。大学院で多様な生き方をする人々に出会い、自分の将来像としても多様な働き方ができるようになればと考えていました。そのときに、地域公共政策士は自分の進路を選ぶときの選択肢を広げる、もしくは目指す選択肢に届くための実力の底上げをしてくれるものだと思いました。
地域公共政策士は、弁護士や税理士のように仕事に直結するものではありません。ですので、習得した能力をすぐに実感するものではありませんが、後々になってから実感してきています。
「ものごとを俯瞰する力」。プロジェクトを動かしたり、考えたりするときも、まずは全体像が知りたいですね。大学院に入ってから自分でものごとを考える習慣がつきました。「コミュニケーションワークショップ演習」の授業があったんですが、その授業は話し合いの流れを図式化してまとめるという内容だったんです。そこでの経験がものごとを俯瞰する力につながっていったように思います。
あとは「傾聴力」。プロジェクトには色々な方々が関わっていますが、何か尋ねるとき、Yes/No疑問文はあまり使わないようにしています。Yes/Noの尋ね方だと、本来の趣旨と違うミスリードをしてしまうかもしれない。だから、How(どのように)といった形で尋ねるようにします。それも難しい場合は、もっと具体的に問いかけるように心がけています。そのときも大ざっぱに舵を切るのではなく、小さな質問をたくさんして、より正確な情報を聞き出すようにしています。
プロジェクトには色々な方がいて、多様な考え方を持っています。時にはそれぞれの意見がバラバラ、ということも。その状態から、プロジェクトの目的達成のためにどうやってそれぞれのニーズを高いレベルまで持っていくのか。僕はできる限り、色々な方々の意見を聞くようにしています。そして俯瞰的にみる。意見が違えば「なぜそう思ったのか」、理由や背景を聞きます。そこから共通点や相互で納得的できる点を見出していきます。
地域公共政策士を取得した仲間たちと一緒に有志グループ「地域公共政策士ネットワークRe:aciton」を2013年12月に立ち上げ、地域公共政策士の個人のつながりを深めてきました。これからは次のステップ。地域公共政策士がどんどんと多様な組織や所属で働き始めます。その組織同士がつながり、創造的な社会の形成に相乗効果が生まれていくような動きが作りだせれば、と思っています。
聞き手:地域協働総合センター 博士研究員 久保友美