龍谷大学では、市民参加型協働のまちづくりの仕組みづくりを進めている京都府北部自治体や近隣市町村と連携し、具体的な教育プログラムを開発し、教育課程に埋め込むべく検討を進めてきた。本研究会は、本事業取り組みについて地域側が理解を深め、大学(本学)と連携先の地域(地方自治体)との教育プログラムの共同開発を円滑に進めるために開催することとした。
本事業の目的の一つである京都北部地域への大学機能移転を実現するために、京都府北部地域・大学連携機構(以下、CUANKA)は重要な役割を担う。本研究会では、CUANKAの本事業における位置づけと役割について、大学側、地域側の双方向からの理解と共感を得て本事業推進に繋げるため、大学関係者や京都北部自治体職員に参加を募り、CUANAKの京都府北部における大学地域連携推進の活動実績の報告の機会を設けた。
■日時:2014年1月11日(土)13時30分~17時00分
■場所:龍谷大学深草キャンパス22号館4階会議室
■参加者:芦田直也(福知山市市長公室企画課)、河野恒州望(福知山市市長公室企画課)、横田未来(福知山市市民人権環境部)、吉野誠(守山市協働のまちづくり課)、坪内稔雄(守山市みらい政策課)、小鎚夕香(守山市協働のまちづくり課)、西垣和美(草津市議会議員)、野村邦彦(大津市自治協働課)、小島勝(日野町企画振興課)、大岡正和(日野町企画振興課)、滋野浩毅(成美大学経営情報学部)、渡辺みゆき(成美大学大学地域連携事業担当)、池田優衣(京都府立大学地域連携センター)、岩田均(京都美術工芸大学 工芸学部)、牧野和人(一般社団法人京都府北部地域・大学連携機構)、久保友美(一般財団法人地域公共人材開発機構)、只友景士(龍谷大学政策学部)矢作弘(政策学部)、松浦さと子(龍谷大学政策学部)、村田和代(龍谷大学政策学部)、井上芳恵(龍谷大学政策学部)、橋本洋平(龍谷大学政策学部教務課)、長谷川裕晃(龍谷大学地域協働総合センター)、大石尚子(龍谷大学地域協働総合センター)
1)大学地域連携実践事例報告
13:30~14:00「龍谷大学政策学部におけるアクティブ・ラーニングの開発の現状」
報告者:長谷川 裕晃/大石 尚子(龍谷大学地域協働総合センター)
14:00~14:30「守山市における市民参加と協働のまちづくりの推進に向けた取組」
報告者:吉野 誠(守山市協働のまちづくり課)
14:30~15:10 「市民協働これまでの経過」
報告者:芦田 直也(福知山市市長公室企画課)
15:10~15:30「京都北部での大学間連携事業に係る取組」
報告者:牧野 和人(京都府北部地域・大学連携機構)
2)大学間連携事業進捗状況報告
15:40~16:00「地域公共政策士資格の開発現状と龍谷大学の教育カリキュラム改革」
報告者:只友 景士(龍谷大学政策学部教授)
大石 尚子(龍谷大学地域協働総合センター)
3)ミニ解説
16:00~16:20 「人々の声から政策をつくる-熟議民主主義と公共性、共通善の政策論-」
解説者:只友景士(龍谷大学政策学部教授)
4)意見交換16:20~17:00
大学地域連携実践事例報告では、大学側からは、龍谷大学のアクティブ・ラーニング開発の現状について、伏見区深草地域に設置された町家キャンパスにおける地域と学生の連携による取り組みについての紹介があった。また、長期地域滞在型PBLプログラム開発として、洲本市との協働事業「グリーン&グリーン・ツーリズムによる地域活力創出モデル構築事業」についての報告があった。これらの教育プログラムは、単位化することが検討されているが、課題としてあげられたのは、学習評価方法、地域と大学間のコーディネーターやサポートスタッフの継続的に確保するための予算措置、大学地域連携のノウハウの蓄積等であった。
次に自治体からの報告では、守山市からは、市民協働のまちづくりの取組についての報告があった。平成21年に市民参加と協働のまちづくり指針を策定、平成23年度には、まちづくり推進会議を設置し提言をまとめ、その実装化に向けた取り組みを展開している。その中の新たな取り組みとして、龍谷大学との連携プロジェクト「わがまち再発見ワークショップ」について紹介された。
福知山市からは、龍谷大学とCUANKA、福知山市との連携によって実施された「福知山100人ミーティング」についての報告があり、大学地域連携の新しいかたちの事例として紹介された。大学・地域連携の事業型プラットフォームCUANKAが、事前準備や地域住民との連絡調整・事前ヒアリング調査を行うなど具体的活動の説明があり、大学との協働事業を円滑に進める上で重要な役割を担っていることが明らかとなった。
次に、CUANKAからは、京都府北部地域における大学間連携事業に係る取り組みについての報告があった。広域的大学連携によるPBL科目開発プロジェクトの事例では、受け入れ地域との事前調整や学生サポート、交通経路の確保、都会では考えにくいトラブル処理などの説明があった。
課題として挙げられたのは、各市町の担当部署の変更や担当職員が交代すると、事業そのものがストップしてしまうことがある。今後は、もう少し地元地域住民との連携を深めていくことが重要であることが報告された。一方大学側については、コーディネートが必要な大学とそうでない大学の差が大きく、大学ともっとコミュニケーションを取っていく必要があることが報告された。予想できない事態になることも多く、そうした場面に対応するためには、地域の信頼を得ることが重要であることが指摘された。
大学間連携共同教育推進事業の進捗報告では、大学地域連携事業をアクティブ・ラーニングとして大学正課に埋め込む検討を進めている中で見えてきた課題や、地域公共政策士資格制度の目的と課題等についての説明を行い、地域側の理解を求めた。
意見交換では、京都府以外の近隣地域から参加した自治体職員のほぼ全員から、「CUANKAに是非うちでもやってほしい」という声が上がっていた。「何か課題が出てきた時に駆け込めるような大学プラットフォームがあれば良い」といった意見もだされ。また、無作為抽出による市民懇談について意見が交わされ、市民の自治意識の向上や共通善を引き出す効果があることや、職員が関わることによって職員の意識改革につながることが指摘され、職員研修としても有効であることが明らかとなった。大学教員からは、こうした市民協働の取り組みを大学と連携して展開することを通じて、学生と自治体、地域の3者が学ぶようなプログラム開発を目指していることが説明された。
CUANKAのような地域と大学間のコーディネート業務では、その板挟みになることも多々ある。参加者からは、自治体側、大学側が相互理解を深める場となるので、今後もこうした機会をより多く設け欲しいとの意見が出された。本研究会では、自治体職員と大学側の大学地域連携の取り組みに対して相互理解を深めることができた。また、地域課題の発見や具体的事業実施の推進、大学との効果的な連携体制の構築等、CUANKAの本事業における位置づけや果たすべき役割についても自治体・大学双方に明らかにすることができたと考えられる。
今回の研究会は土曜日開催ということもあり、大学事務職員の参加者が少なかった。今後は、こうした機会を積極的に設け、大学教職員と地域ステークホルダーとの相互理解の場を提供することによって信頼関係を築いていく必要がある。
以上