龍谷大学
3 地域課題調査手法の開発
3-1: 政策マーケティング手法の開発に向けた教育プログラム

政策マーケティング手法の開発に向けた教育プログラム

人口減少、急速な高齢化を目前に控え、各地域の持っている個性や魅力が最大限発揮できるようなまちづくりを進めることが地方自治体にとって喫急の課題となっています。本取組は、福知山市と連携し、取り巻く環境や社会潮流の変化に対応した政策課題を抽出するためのマーケティング調査をおこない、地域課題の解決と学生の調査能力向上に向けた教育プログラムを目指していきます。

平成24年度は、政策マーケティング調査に先立ち、本事業の学内体制をつくり、そして福知山市の行政担当者と来年度に向けた意見交換会をおこないました。大学と地域の双方にメリットを持てるプロジェクトにするために、議論を重ねてきました。多様化・高度化する市民ニーズを汲み取るための政策マーケティング調査として、従来型のまちづくり市民アンケート調査の他、「100人ミーティング」と市民協働を支援するための「地域プラットフォームづくり」の提案など、新たな政策マーケティング手法の開発に向けて検討を進めております。

今年度は、政策マーケティングについて福知山と精査、再生可能エネルギー事業を政策マーケティングと連動させ、地域への実装を目指します。

政策マーケティング事業「未来を描く!福知山100人ミーティング」および事前全体ガイダンス実施について

実施日時・場所

日 時:

9月5日(木)17:00~21:00 「事前全体ガイダンス」実施

9月6日~8日10:00~16:00 「100人ミーティング」実施

場 所:

成美大学食堂

 

概 要

 政策マーケティング事業の一環として、福知山市市長公室と龍谷大学、福知山市民協働推進会議の協働で準備を進めてきた100人ミーティングおよび、事前全体ガイダンスの実施のため、出張業務を行った。概要は以下のとおりである。

 

100人ミーティングについて

 100人ミーティングは、3日間に渡り実施した。話合いのテーマは3日間とも同じ内容とし、無作為抽出で選定された市民60名を含む101名の参加者は、3日間のうち1日だけ参加することとし、各日とも5名~6名のグループに分かれ、少人数でのワークショップを実施した。また、前夜には、参加者全員とファシリテーターが顔を合わせる機会を作るため、事前全体ガイダンスと事前のファシリテーター打ち合わせを行った。ファシリテーター打ち合わせでは、テーマの趣旨説明、グループワークを進める上での注意点などの確認を行った。また、全体ガイダンスでは、100人ミーティングを行う意義や、グループワークをする意味、注意点や心構えについて、只友先生、土山先生による講義を行った。その中で、参加者市民一人一人がまちづくりの主体となり、自分に何ができるかを考えることを通じて、まちづくりに参加する楽しさを経験することが大切であること、そして、こうした取り組みを通じて、市民一人一人が市民意識を持つことになり、それがより良いまちづくりに繋がっていくことが強調されていた。また、全体ガイダンスでは、各グループのファシリテーターと参加者同士が事前に顔を合わせて言葉を交わすこととなり、次の日の100人ミーティングでの話し合いの場づくりに効果があったと考えられる。

 

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ワークショップの内容について

 3日間のワークショップでは午前、午後に分けてテーマを設定した。午前中はアイスブレイクを兼ねてテーマ「福知山スウィーツで町おこしを考える」とし、福知山の和洋菓子を食べながら、参加者の好きなスウィーツを、その思い出などを交えて出し合い、スウィーツによる福知山活性化のアイデアを出し合った。午後からはテーマ「『子どもに残したい大好きな福知山』にするために、大人ができることを考え、『2030年後-持続可能なまちづくり』のビションを考えよう!」とし、前半は、福知山で子どもに残したいところを出し合い、残していくために乗り越えなければならない課題を出し合いそのために大人に何ができるかを出し合った。後半は、前半の話し合いをふまえた福知山の将来のビジョンづくりを行った。

 

参加者について
 

 参加者は、高校生から70代までと幅広く、多様な意見がだされていた。アクティブ・ラーニング開発のためのモニターとして龍谷大学から2名の学生が参加し、そのうち1名はファシリテーターを務めた。また、会場設営や受付等の運営は、京都府北部地域・大学連携機構が担い、成美大学からは、教員がファシリテーターとして、学生OBは参加者として参加した。

 100人mtg参加者1.JPG 100人mtg学生.JPG 100人mtg参加者2.JPG

抽出された意見について

 各グループからの話し合いでは、福知山で子どもに残したいものとして、自然や伝統、住みやすい環境、人のつながりなどがあげられ、それを残していくには、人口を維持するための雇用創出や人材育成、市民一人一人の市政参画の重要性などがあげられた。具体的な事業としては、「花火大会を日本一安全でエコなものにする」構想や、「成美大学を世界一地域に根差した大学にする計画」、「若者が住みたい街近畿NO1」など、様々なビジョンや構想が発表されたが、20年後30年後の福知山の未来像を考えることを通じて、少子高齢化に伴う今福知山が抱える共通課題も明確になった。また、参加者からは、初めて大学に足を運んだという声を多く聞き、「大学が活性化すれば、若者が集まり、雇用や消費活動が活発となるだけでなく、地域連携を深めていくことで人材育成と地域再活性化につながる」など、地域における大学の役割について議論するグループもあった。参加した学生も、自分の故郷と課題を照らし合わせ、地元住民と活発に議論を交わしていた。また、ファシリテーターを務めた学生は、年代の違う一般市民と向き合い理解を得ることの難しさや、語りの場のマネージメントの難しさ、人の多様な意見を一つにまとめていく楽しさなどを経験できてよかったと感想を述べていた。参加者からは「参加してよかった、楽しかった、(まちのために)何か活動をはじめたい」といった感想が多く聞かれた。ミーティングの結果については福知山市でまとめ、後日参加者たちにも報告されることになる。

今後は、龍谷大学との協働プロジェクトとして、これを政策マーケティングの一つの手法と位置づけ、その他の市民協働の政策形成手法と合わせて体系化して市民協働型政策形成プログラムを開発する予定である。そして、学生がこれらのプログラムに参加することを通じて市民協働の政策形成のしくみを学ぶアクティブ・ラーニングの開発に繋げていくことを目標としている。

以上

朝日新聞記事131004-圧縮.jpg

 京都新聞 2013年10月4日(金)朝刊に本取組が掲載されました。

平成25年度