京都文教大学
1 アクティブ・ラーニングの開発
1-1 資格開発事業

資格開発事業

本学の地域公共政策士第1種プログラムは、文化コーディネーター養成プログラム、ならびに地域マネージャー養成プログラムで構成されます。前者のプログラムは、地域の文化をプロデュースし人と人のつながりをつくりだすことによって活気あるコミュニティをデザインする知識や技法を備えた人材を育成することを目的としています。後者のプログラムでは、行政の政策過程を視野に入れ、地域課題を市民主導で解決し、「地域をマネージ(manage)する」人材の育成を目的としています。本年度は、これらのプログラムの充実と発展を図ります。特に、地域マネージャー養成プログラムの充実化を図るために、地域マネジメント力を持った人物を招聘し、講演会の開催を視野に入れています。この講演会は、学生のみならず教職員を対象とするものであり、ローカルな公共の現在およびそこで活動するための条件を学ぶことを目的とします。

アクティブ・ラーニング事例調査――2013年度第1回河合塾FDセミナー 教員の協働を促すアクティブラーニング

2013年度第1回河合塾FDセミナー

「教員の協働を促すアクティブラーニング 学びの質保証をいかに実現するか」

日時:2013年10月12日(土)11:00~17:30

場所:河合塾 麹町校8階 デルファイホール  主催:河合塾

 このセミナーは、アクティブラーニング(Active Learning) ――以下、ALと略記――に関心を有する大学関係者を対象にして開催されました。セミナーの目的は、大学教育におけるALの促進と展開を図ることにあります。本学の大学間連携共同教育推進事業を担当している職員2名が、教育手法の調査としてこのセミナーに参加しました。大学間連携事業では、ALを活かした教育プログラムの開発がすすめられているため、ALの現在を知ることは必須です。

 セミナーでは、河合塾大学教育力調査プロジェクトによる「2012年度大学のアクティブラーニング調査」の結果報告をはじめ、ALを活用した教育の事例報告、AL導入を前提とした教員の協働について考えるワークショップが行われました。セミナーには、約80名の大学関係者が集い、東京大学、立教大学、国学院大学をはじめ、日本福祉大学、関西学院大学など、様々なエリアの大学が参加しました。

 今回のセミナーを通して、ALはあくまでも学生の学びを促す手段であり、目的ではないこと、ALは関連科目と有機的に繋がることでその効果が上がること、ALに取り組むことで教員同士の協働、学部・学科全体の協働が促されること、結果的にFDにつながるなどを学ぶことができました。

 特に、印象に残ったのは、ALの事例報告です。名古屋学院大学経済学部総合政策学科のALを発展的に組み入れたカリキュラム、立命館大学国際関係学部の「グローバル・シミュレーション・ゲーム」、立教大学経営学部の「ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)」がALの事例として報告されました。この3つの大学の事例はどれも、ALのよきお手本であり、随所に学生が勉強しよう、学んでみようと思わせる工夫がされている、そして学部・学科の学生全員を巻き込んだALに仕上がっていることを実感しました。

 ALは、地域公共政策士プログラムの開発をすすめる上で鍵となる教育手法です。本学は、ALの開発のために、積極的にALの先進事例の調査を行っていきます。

 

セミナーの構成[敬称略]

第1部「2012年度大学のアクティブラーニング調査」結果報告

河合塾からの報告 河合塾大学教育力調査プロジェクト

第2部 名古屋学院大学院経済学部からの事例報告

名古屋学院大学 経済学部長 伊澤俊泰

第3部 立命館大学国際関係学部からの事例報告

立命館大学 国際関係学部副学部長 河村律子

第4部 河合塾からの提言と立教大学経営学部のBLPの紹介

立教大学経営学部 BLP主査 リーダーシップ研究所長 日向野幹也

第5部 ワークショップ

 

「第14回全国まちづくりカレッジ2013in 東京」への参加

日時:2013年10月12日~10月13日

於:明治学院大学白金キャンパス

参加者:森正美(本学総合社会学部教授)、押領司哲也(フィールドリサーチオフィス課長)、江崎洋子(フィールドリサーチオフィス)

「まちづくりカレッジ」への参加は、アクティブ・ラーニングの理解にとって有効です。ここに集合する学生たち(ゼミ、団体、学生プロジェクト)は、地域と連携し、多彩な活動をしています。地域振興に資するイベントの企画と考案、地域の産品を活用した商品企画とその販売・広報、地域コミュニティー創設事業等、多岐にわたります。そうした活動は、課題の発見、ビジョンの策定、解決方法の考案とその実行、そして結果の評価という一連のプロセスに則って行われます。そうした活動は、チームで行われ、アクティブ・ラーニングそのものであると言えます。

参加校の学生は、これまでのまちづくり活動の紹介ならびにその成果を報告しました(各大学は10分間でプレゼンテーションを行う)。以下、参加校を報告順に記しておきましょう。

 

大阪人間科学大学(「あかりプロジェクト」)、皇學館大学(「宇治山田プロジェクト」)、岐阜経済大学(「マイスター倶楽部」)、愛知大学(地域政策学部)、(京都文教大学「全国お茶まちづくりカレッジin宇治」)、東海大学(「SAN」)、香川大学(「直島地域活性化プロジェクト」・「小豆島地域活性化プロジェクト」・「Bonsai Girls」)、名古屋学院大学(「Café&Bakery Mile Post」)、松本大学(地域づくり考房『ゆめ』)、星城大学(観光まちづくりコース)、 国立台湾大学、明治学院大学(服部ゼミナール)

 

学生は、地域発展、観光、カフェ運営、地域の特産品の広報等と多彩なテーマを掲げ、実社会のビジネスに近い活動を行っています。そうした活動は、学生と担当教員(あるいはアドバイザー教員)とのチームで行われます。それぞれのチームは「事業体」です。参加した学生は、報告をとおして、「事業体」をよく運営することができるように、他者との討議やチーム内での合意形成の有効さと困難さを感じていました。また、報告に臨んだ学生たちはみな、そうしたプロジェクトの運営に積極的にコミットしていることも理解できました。「まちづくりカレッジ」では、常に、学生のアクティブな活動をダイレクトに知ることができる格好の場なのです。

「第2回 全国学生カフェサミットin香川」への参加

日時:2014年2月22日(土)~2月23日(日)

於:香川大学経済学部キャンパス(香川県高松市)/和カフェぐぅ(香川県直島町)

参加者:江崎洋子(フィールドリサーチオフィス)

 「全国学生カフェサミット」は、ゼミ活動やプロジェクト型学習の一環、あるいは課外のプロジェクト活動としてカフェ運営を行う学生たちが全国から集合し、これまでの活動やその成果を報告するイベントです。学生たちはカフェ運営の中で、組織運営、コスト計算(人件費・原材料費の計算や損益分岐点の計算)、商品企画、広報等といった実社会のビジネスとほぼ同等のことにチャレンジします。また、カフェ運営に臨む学生たちは、地域に根差したカフェ運営を展開することにより、大学の地域貢献さらには地域課題の発見とその解決をも視野に入れています。いわば、カフェ運営活動は、アクティブ・ラーニングの体現の場なのです。

今回の「第2回 全国学生カフェサミットin香川」は香川大学が主催となって開催されました。今回のカフェサミットにも、多彩なカフェ活動をする学生たちが集合しました。以下、参加校を報告順に記しておきましょう。

 「ユルカフェ」(明治学院大学)、「ここたの」(一橋大学)、「まちカフェりんく」(敬和学園大学)、「学生ボランティアカフェ リースヒェン」(神戸松蔭女子大学)、「cafe flat」(山梨大学他)、「Cafe&Bakery MilePost」(名古屋学院大学)、「文教カフェANTENNA」(京都文教大学)、「かたるカフェ」・「縁側カフェ」(大分大学)、「HUE cafe Time」(広島経済大学)、「喫茶 白鳥」(香川大学 小豆島SAKATEプロジェクト)、「和cafeぐぅ」(香川大学 直島地域活性化プロジェクト)

※特別ゲストとして、宮城県石巻市の高校生が運営する「いしのまきカフェ「 」(かぎかっこ)」も参加。。

  カフェ活動は、地域のなかにコミュニケーションの空間を生み出しうる重要な活動であす。地域に学生が入り、カフェを地域住民に提供して、地域住民に会話の機会をつくる(もちろん学生と地域住民の会話もそこに生まれる)、こうした人々の会話あるいは交際の発露によって、地域の中に人々のつながりが生まれると考えます。学生は、カフェ運営というビジネスを行うと同時に、地域の中に人々の交流と協働の場、さらに言えば公共を創出することに関与すると言えましょう。「全国カフェサミット」は、地域に連携をもたらし、「協働型社会」の実現に力を発揮する地域公共人材のイメージをより深化させるための手掛かりになると考えています。

「2013年度 第3回PBL推進協議会」への参加

日時:2014年2月21日(金)

於:同志社大学東京オフィス

主催:同志社大学 PBL推進支援センター

参加者:押領司哲也(フィールドリサーチオフィス) 

この会の目的は、「PBLにおける地域連携のかたち――域連携型プロジェクトの課題を考える――」をテーマに掲げ、PBLを検討することにあります。PBLの有識者が、大学-地域連携と関連させ、大学に求められる教育手法について報告をしました。報告者は、宇都宮大学基盤教育センターの蜂屋大八氏(特任准教授)および茨城大学にある大学教育センター鈴木敦氏(同大学人文学部教授・同センター副センター長・キャリア教育部長)です。

蜂谷報告では、学生が地域で学ぶ意義として、(1)知識を実際に使う経験ができる、(2)中山間地域における農家民泊での「一時生活者」の経験ができる、(3)本当の意味での「豊かさ」を学ぶことができる、といったことが示されました。また蜂谷報告は、学生が住民活動の「良き支援者」であり、学生が地域に入る意義はその点にあると強調しました。

鈴木報告では、学内でPBLの浸透を図るために、学生と教員それぞれに手引き(ハンドブック)を作成したこと、正課授業科目である「プロジェクト実習」において初級PBLである「プロジェクト実習スタッフ」、上級PBLである「プロジェクト実習リーダー」のプログラムを整備したことなどが報告されました。鈴木教授は、授業において「失敗から学ぶこと」、ならびに「若者の活動から大学生の活動へ」ということを学生に意識させていると言及されました。

最後に、参加者との意見交換が行われ、「学生への評価は、プロジェクトとしての成功や失敗よりも、本人が何を学んだかに力点を置き」、そして「学生同士の相互評価や自己評価などを多面的に活用する」ことが重要であるという指摘、「PBLに何か特別な評価尺度や唯一無二の指標があるのではなく、評価指標を多様化させていくことが大事なのではないか」という問題提起、「大学と地域が協働した活動を継続していくには、双方にとって、その活動が共有財産化されているかが肝要である」という見解が挙げられました。これらは、PBL、大学-地域連携の展開、そして地域公共政策士資格プログラムの受講者の評価基準を考えるにあたって重要であると考えられます。

地域マネジメント能力養成プログラム(講演会)開催

講演タイトル:「ファンドレイジングが社会を変える――共感と納得が地域に生み出す幸せの循環――」

日時:2013年12月6日(金) 13:00~14:30

於:京都文教大学 弘誓館G101

講師:鵜尾雅隆(日本ファンドレイジング協会代表理事)

本学の地域公共政策士第1種プログラムには、「地域マネージャー養成プログラム」があります。このプログラムは、地域をマネージする人材=「地域マネージャー」を養成することを目的としています。「地域マネージャー」は、地域の課題の発見、課題を解決するためのビジョンの設定、そのビィジョンを実現するための政策の策定、政策の実行、政策の評価といった一連の行動をとおして、地域課題の解決に挑むことができる人材です。このような地域課題の解決のための、一連の行動を「地域マネジメント行動」としています。この「地域マネジメント」に必要な行動および能力を幅広く本学学生に理解してもらうために、上記の講演会を開催しました。この講演会のポイントは、「ファンドレイザー」です。

 講師は、日本ファンドレイジング協会の代表理事である鵜尾雅隆氏です。日本ファンドレイジング協会は、2009年に寄付10兆円時代を目指して設立された協会です。ファンドレイジング協会は寄付金を調達し、それがNPO組織に行き渡るよう努めています。寄付金を調達し、寄付金を必要とする組織に行き渡るようにすることがファンドレイジングであり、それを行う者がファンドレイザーです。ファンドレイザーは寄付市場を舞台に、セクターの壁を超え、NPOと社会(市民)をつなぐ者でと言えます。

 鵜尾氏による講演のポイントは、ソーシャルマネーのトレンド、寄付の可能性、ファンドレイザーの役割でした。近年の日本において、社会貢献に対する意識は高まりつつあります。そうした状況の中で、多くの人が、社会貢献に飢えていると鵜尾氏は述べられました。社会の課題の解決に挑む者は様々に存在しますが、この講演の中では、NPOに焦点があてられました。NPOはボランティア団体ではなく社会の課題を解決するプロフェッショナルであると。それは、NPOはセクショナリズムにとらわれることがないからです。NPOは、国境を超えて、様々なアクターと連携しながら社会の課題に応答することができるのです。鵜尾氏は、NPOが「社会を変える」ことができる存在であると明言されました。ファンドレイザーは、そうしたNPOがより活動できるように寄付金を調達し、NPOに行き渡るようにします。ファンドレイジングはNPOが「社会を変える」ためのツールなのです。

 そして鵜尾氏は、寄付は自分が他者に請うことによって集まるのではなく、他者が自分と「共感」することによって集まることを強調されました。ファンドレイザーは、寄付を集めるために、人々の「共感」を生み出すのです。「共感」を生み出すファンドレイザーは、セクターの連携を生み出す地域公共人材と重なります。地域公共人材の育成、地域公共政策士資格プログラムを推進する中で、ファンドレイザーへの着目は必要であると考思われます。

平成25年度