京都文教大学
2 大学地域協働の関係づくり
2-1地域との協力による開発調査事業

地域との協力による開発調査事業

他大学ならびに地域の先進事例を調査することにより、地域住民のニーズや地域社会の動向を把握します。それを、資格教育プログラムの開発に活用するとともに、社会の要請に合致した大学教育を目指します。また、大学と地域の協働関係の構築のために、本年度においても地域連携学生プロジェクトを実施します。地域連携学生プロジェクトの実施により、地域住民と協働した学習(学生の実践的能力の向上)が進められます。また、プロジェクトにかかわる学生が地域住民が参加可能なイベントを開催することにより、地域住民との交流を促します。地域連携学生プロジェクトの推進により、本学は、地域-大学のパートナーシップの構築に努めます。

「地域と協働する大学づくりシンポジウム――地域と大学の更なる協働に向けて――」への参加

開催日:2013年5月10日(金)

於:文部科学省旧庁舎6階講堂

参加者:森正美(本学総合社会学部教授)、押領司哲也(フィールドリサーチオフィス課長)

 このシンポジウムでは、文部科学省による大学の「地」の拠点化にかんする報告(説明)、および東京学芸大学と広島修道大学の事例発表、パネルディスカッションなどが行われました。

 2012年の『大学改革実行プラン』を持ち出すこともなく、大学と地域が連携し、両者がフラットな関係の構築を求めることは、近年の大学の動向の一つです。このシンポジウムでは、大学の教育や研究を地域の課題とリンクさせる、大学が全学的に地域志向の姿勢をとる、大学側からの一方的な支援ではなく大学の持っているリソースを地域に還元する等、大学‐地域協働のための条件が提示されました。その他にも、大学と他のセクターが「連携」することにより人材が育成される、生涯教育と地域連携の相互関係、熟議によるセクター間のネットワークの拡大等についても語られました。これらは大学-地域協働関係の構築のエッセンスと言えます。このシンポジウムに参加して、大学-地域協働の現在そして大学-地域協働のエッセンスを知ることができました。

「地域と大学を繋ぐコーディネーターのための研究実践セミナー」への参加

開催日:2013年11月28日(木)~11月29日(金)

於:和歌山県立情報交流センターBig U、秋津野ガルテン

参加者:矢島信(フィールドリサーチオフィス)

 このセミナーの目的は、大学の地域連携に関わる大学教職員が集合し、大学-地域連携の現在、地域連携業務に必要な知識と技術、大学における地域連携(社会貢献)の位置などについて意見交換を行うことにあります。特に、このセミナーでは「地域コーディネーター」がフォーカスされました。「地域コーディネーター」は、地域と大学の連携を調整するあるいは地域連携を実現する「人材」です。大学の使命に、「社会貢献」が加わった今、社会貢献としての地域連携の担い手である「地域コーディネーター」についてセミナーに集合した参加者は議論を重ねました。

 このセミナーは、和歌山大学の山本学長のスピーチで始まりました。「社会貢献(地域連携)は、研究と教育に次ぐ新しい大学の役割である」と山本学長は明言されました。そして、山本学長は、「個人と個人が連携するのではなく、組織(地域)と組織(大学)が結び付くわけであるから、そのためには共同(協働)のマインドが必要となる」、そしてそのマインドを持つ者こそが、「地域コーディネーター」であると語られました。

 その後、先駆的事例発表として、以下の3つの報告がありました。

・兵庫県立大学環境人間学部エコ・ヒューマン地域連携センター長代理(専任講師) 内平隆之氏 「学生を通じた地域連携におけるコーディネート」

・高知大学国際・地域連携センター地域連携・再生部門(特任講師) 吉用武史氏 「地域課題解決と自治体連携におけるコーディネート」

・和歌山大学南紀熊野サテライト地域連携コーディネーター 古久保綾子氏 「地域拠点を通じた地域の人材育成と活性化――観光・ジオツーリズムにおける地域連携コーディネート――」

  内平報告では、地域課題解決に挑戦する機会を学生に与えることにより、地域と大学が学生を介して連携できるということが強調されました。吉用報告では、高知大学の特任教員である「大学派遣地域コーディネーター」を、高知の7つの地域に在駐させ、常に高知大学の関係者と地域が交流し続ける仕組み(「24時間×365日、常に教員が地域にいる」ことを目指す、「高知大学インサイド・コミュニティ・システム化事業」)が紹介され、古久保報告では、自然を保全し自然の公園(ジオ・パーク)を活用し、自然の観光資源を活かした地域社会の活性化について報告されました。

 この3つの報告はどれも、大学-地域連携のよき見本であります。大学が地域と協働関係を構築するためには、大学と地域の間にどんな媒介項を置くか――例えば、兵庫県立大学は学生による活動、高知大学は「大学派遣地域コーディネーター」、和歌山大学はジオ・パーク――、この点を考えることが地域連携の要と言えましょう。そうした理解をもとに、地域と大学をつなぐ媒介項には、両者のコーディネーションをよく行える人材=「地域コーディネーター」が必要となることも、事例報告をとおして確認できました。

 

 

〈香川大学シンポジウム〉「地域と大学のパートナーシップを考える」への参加

開催日:2013年12月11日(水)

場所:香川大学

参加者:矢島信(フィールドリサーチオフィス)

 このシンポジウムはそのタイトルが示す通り、「地域と大学のパートナーシップ」を考えることを目的とします。大学-地域連携を積極的に推進している大学(教員)の取り組みについて報告されました。報告者と報告タイトルは以下の通りです。

 ・「大学と地域の協働(パートナーシップ)はなぜ必要か」 報告者: 鈴木誠(愛知大学地域政策学部教授) 

・「学生と地域の方々とのWin-Winの関係づくり――松本大学産学官民協働事業の実践より――」 報告者: 福島明美(松本大学・地域づくり考房『ゆめ』専任講師)

・「魚らんラボの概要と取り組み」 報告者: 服部圭朗(明治学院大学経済学部教授)

・「本学経済学部における学生主体の地域づくり」 報告者:西成典久(香川大学経済学部准教授) 

  愛知大学の鈴木報告では、「予測困難な時代」において、各セクター(国、行政、企業、市民、ボランティア団体、NPO団体、地域社会、大学等)の協働が有効であること、そして大学は各セクターと連携し、自覚的・主体的に課題の解決に挑むことが望まれていること強調されました。社会状況の変化とともに、大学の役割もまた変容することが確認されました。

 松本大学の福島報告では、地域と大学はwin-winの関係にあるべきだということが主張強調されました。換言すれば、地域と大学は信頼関係を互いにつくらなければならないということです。福島報告は、互いの強みを強調するのでなく、互いの弱みを強調すること、信頼関係の構築に大切であることをも強調しました。福島報告では、地域と大学の間に信頼関係=win-winの関係が構築されてこそ、「地域と大学のパートナーシップ」が展開されることが示されました。そうした信頼関係によって、地域で展開する大学教育はよりよく実現するのです。

 明治学院大学の服部報告では、服部ゼミの学生たちが展開する「魚らんラボ」の取り組みが紹介されました。「魚らん」とは、明治学院大学の近隣にある魚らん商店街(東京都港区)にちなんで名づけられた、大学のサテライト施設(研究・教育・交流の拠点)です。商店街に大学が関与し、コミュニティー形成に貢献する格好の事例が報告されまいした。

 香川大学の西成報告では、同大学経済学部で展開される学生の地域連携活動が紹介されました。同大学では、経済学部学生チャレンジプロジェクト事業として、様々な学生による地域連携活動が展開されています。「経済や経営に関する専門知識を活かして国内外で活躍できる人材を育成する」という香川大学経済学部の教育目標実現のために、同プロジェクト事業は展開されてきました。この事業によって推進される学生地域連携活動は18あり、多彩な「地域連携活動が正課・課外問わず様々な形で進められています。西成報告では、学生による地域連携活動を推進することによって、大学が地域のサポーターになるということが強調されました。

 このシンポジウムで報告されたことはどれも、大学-地域協働関係の探求に必要なことを示唆してくれました。 

平成25年度