◎ 開催主旨
2020年の東京オリンピック開催が決まり、国民のスポーツに対する意識はおのずと高まってくると思われます。政府も2010年には「新成長戦略」を閣議決定し、その中の「日本の強みを活かす成長分野」の7つの柱の中に医療を含む健康や観光が含まれています。健康やスポーツに関するツーリズムは今まで以上に重要視されるでしょう。
ただ、地方にとっては、オリンピックやスポーツの国際大会、スポーツイベントを招致することはたやすいことではなく、持続可能かどうかという視点では難しいと思われます。
そこで今回は、現実的に交流人口を増やすために、地域として何ができるかを具体的な成功事例から北近畿に適合したビジネスモデルを構築するための実践的セミナーを開催いたします。質疑応答に時間を多くとらせていただきますので、皆様の御来場をお待ちしております。
2012年から九州でスタートした「九州オルレ」という韓国・済州島発祥のトレッキングコースです。現在、8つのコースが実施され、年内に2コース、来年にはさらにコースが追加されますが、多いコースでは韓国人のグループだけで3000人近くが歩くことを目的に来ています。韓国人の個人客や日本人を含めるとその倍の観光客がコースを目指して来ているといわれます。2015年就航予定の浦項からのフェリーやクルーズ船寄港を視野にいれて、インバウンドの誘客を考えてみることは有意義だと思います。
天草の小さな旅館が、宿泊客を毎日ウォーキングで地域や商店街を案内することで宿泊客数を大幅に伸ばし、リピート率も挙げた事例を紹介します。ハードへの投資ではなく人に投資することで経営改善を行うだけではなく、地域の活性化にも役立っている取り組みから北近畿における可能性を考えてみたいと思います。国際観光旅館連盟作成の旅館の損益計算書等との比較も行い、このプログラムの有効性を確認します。
なお、このセミナーは、文部科学省大学間連携共同教育推進事業の「大学地域協働の関係づくり」のプログラムとして開催いたします。
1.主催者あいさつ(13:00~13:05)
2.「九州オルレ」による韓国人誘客の成功事例と観光振興(13:05~14:05)
講師:九州観光推進機構 海外誘致推進部 河野哲郎部長
3.天草における小旅館のヘルスツーリズムによる旅館経営改善と地域活性化の事例(14:05~14:45)
講師:成美大学 辻本千春准教授(次世代ヘルスツーリズム研究室)
4.質疑応答
5.終了(15:30予定)
◎ 募集人員:50名(自治体関係者、観光関連業者、宿泊関係者、運輸関連業者等)
◎ 参加費用:無料
◎ 申し込み先:会場、資料等の準備の関係がありますので、参加ご希望の方は事前にお申し込みください。成美大学ニューツーリズム研究所(nt@uv.seibi-gakuen.ac.jp )またはファックス0773-24-7170にて。
昨年は2020年のオリンピック東京招致が決定した。また、今年は冬季のソチ・オリンピックやワールドカップ・ブラジル大会も開催されるため、スポーツに関しての意識はおのずと高まると予想されている。
日本人はもとより海外からのスポーツツーリストにとっても、日本は観光地としてだけではなく山と海が迫っている地形や整備された野外スポーツに関する環境の評価は高いといわれている。特に北近畿は観光資源が豊かな地域である。ただ、これら自然や観光資源の情報発信力が伴っていないため、どうしても情報量が多い都市部や有名観光地に目が向いていると考えられる。
前年度は、スポーツ観光やウォ―キング、トレッキング等に取り組んでいる先進地を視察したが、スポーツ観光の推進は、本来は、「スポーツコミッション」的なワンストップセンターを立ち上げて、官民一体で取り組むことが重要である。それには合意形成やそれ以前の準備に時間がかかることも分かった。
そこで、「スポーツコミッション」を見据えながらも、まず、現実的にできる「スポーツ観光」に関わるビジネスについて、その成功事例の取り組みを理解することで北近畿にあったスポーツ観光のビジネスモデルを地域協働で作り上げたいと考え、今回の「スポーツ観光実践セミナー」を実施した。
セミナー参加者のうち15名が行政あるいは関連組織のメンバーで、兵庫県も含め北近畿のほとんどのまちから参加があった。スポーツ観光への関心の高さを垣間見たが、反面、数多く案内した宿泊関係からの参加者は2名にとどまった。一概には言えないが、受け入れ機関側が「スポーツ観光推進」は自分たちの仕事ではないと感じている可能性もあり得る。スポーツ観光の拠点としての旅館やホテル等の宿泊施設の重要性を関係者に伝えたかったが難しい点があった。
ただし、参加した京都府中丹広域振興局から、2月に関係業者を対象にした「スポーツ観光セミナー」を実施したいというオファーがあり、今回の実践セミナーで参加者が少なかったセクター対象の企画であり、アンサーセミナーとして補完ができたと思われる。
*参考:行政セクターからの参加者
京都府制作企画部計画推進課 1名 福知山市観光振興課 1名
与謝野町商工観光課 1名 福知山市市長公室企画課市民協働係 1名
京丹後市商工観光部観光振興課 2名 京都府中丹広域振興局農林商工部 2名
豊岡市環境経済部大交流課 2名 舞鶴市教育委員会スポーツ振興課 2名
綾部市体育協会 1名 養父市観光協会舞鶴市スポーツ協会 1名
アンケート結果からは、2つの成功事例は「大変参考になった」「あるいは参考になった」あわせるとほぼ100%であった。いろいろなスポーツ観光に取り組んでいることも明らかになったが、枠組み作りや推進方法が分からないという回答が多くあった。
今回のセミナーでいくつかの課題が明らかになった。ひとつは、参加者数にも表れているように行政と観光地の受け入れ側に意識の差がある可能性がある。ふたつ目は、参加者は「スポーツ観光」の重要性を認識しているが、漠然としており方向性が定まっていない。ベクトルを合わせることができるかにかかっている。ただ、すでにあるもの、資源を如何に有効活用するかという点では合意ができている。
したがって「スポーツ観光のビジネスモデル」には、やはり行政と関係業者、地域の合意形成が必要で、やはり、ある程度の仕掛けや枠組み作成は行政が担うとしても、持続可能なモデルにするためには受け入れ側(地域)の主体的な動きが欠かせないと考える。テーマを絞り、成功事例からエッセンスを抽出してより具体的な取り組みを進める必要があると感じた。