2013年7月23日
第2回:野池 雅人氏
(特定非営利活動法人きょうとNPOセンター 事務局長)
"より豊かな地域連携の実現に向けて"
「特定非営利活動法人 きょうとNPOセンタ-」

野池 雅人氏

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特定非営利活動法人きょうとNPOセンター 事務局長

■ きょうとNPOセンターについて

 当センターは、特定非営利活動促進法制定の年、1998年に設立されたNPO法人です。今年で15年目をむかえます。設立当初からNPOのための支援組織として、NPOの設立や運営相談、資金調達等の支援、NPOとボランティアとのマッチング等、NPOや市民活動の自立的発展を支える活動を行ってきました。また、これまでに、日本初のNPOによるコミュニティFMの開局・運営、NPOや市民活動を支える寄付を集める仕組みとしての公益財団法人京都地域創造基金の設立、NPOの透明性や信頼性を高めるための一般財団法人社会的認証開発推進機構の設立等、中間的な支援活動にととまらず、NPOや市民活動に必要なサービスや仕組みを事業化するということについても積極的に独自事業として実施しています。

■ 社会の変化・行政との関係の変化

 現在、全国では45,000以上、京都府内にも1200法人を超えるNPO法人が活動するようになりました。同様の公益的な活動をしている社会福祉法人が約20,000法人、財団法人・社団法人が25,000法人、医療法人が約40,000法人程度であることから考えても、短期間の間にNPOの社会的認知や取組みは格段に広がりました。しかしながら、日本における急速なNPOの拡大の中で、新たな課題もでてきています。特に行政との関係です。ここ数年、NPOと行政との協働の名のもとに、全国的な傾向としても行政からの補助金や助成金は急激に増えてきました。そのこと自体は、NPOが果たせる役割が地域の中で増えてきた表れとも言えますが、一方で多くのNPOが資金的にもそして実質は事業的にも行政への依存度を高めることにつながっています。

そのようなNPOの行政依存や下請け的な状況が、結果として、NPOにとって行政から自立的・独立的な立場をとりづらくさせ、本来の市民性の発露を起こりにくくさせています。このような状態は、行政施策を補完・推進するような活動ばかりを増やすことにもつながり、NPOにとって重要な機能である社会的認知がまだ低い活動や権利擁護的な活動例えば、自死家族の支援、犯罪や暴力等の加害者の支援、高齢化・長期化しているひきこもりの支援などの「市民にしかできない領域」が置き去りにされていく可能性があるのではないかと危惧をしています。

■ まとめとして ~民と民との協働をより豊かに~

 このような行政依存の関係性を脱するために、当センターが力をいれているのが地域の中における民間同士の連携です。

特に大学との関係構築には大きな期待をしています。それは、資金的な支援をしてくれるスポンサー的な役割や、従来のような研究的な側面とは違い、地域課題の解決に向けて、事業の企画、事業実施、資金調達も含む総合的な事業パートナーとして、「市民にしかできない領域」の活動を豊かにしていける可能性を感じているからです。

当センターも2011年に龍谷大学政策学部と、当センターが指定管理者として運営する伏見・東山の市民活動センターの運営に関して相互協力に関する協定を締結しました。当該地域は古くからの公団住宅が多く、高齢者の割合が他地域に比較して非常に高い等、特有の課題を抱えている地域でもありますが、NPOに圧倒的に足りなかったマンパワーや研究成果という資源を大学側が提供し、大学として弱かった地域に根ざした活動のノウハウや地域の方々との接点をNPO側が丁寧につなぎながら、最終的には、東山・伏見の地域で学生が学び、学生が学んだ事や気づいてしまった地域課題の解決にむけて動きだし、地域に還元していくことを目指し活動をしています。

今後も当センターは、これまで大切にしてきた「NPO・市民活動支援」という枠組みと、「地域づくり」という観点から、大学を含む、地元中小企業や地域の自治会・町内会のような民間組織同士の連携を通じた事業展開、仕事づくりをさらに加速させていきたいと思っています。そのような展開を通じて、上記の問題意識であるNPOと行政との関係性も変化をさせていきたいと考えています。

 

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